3.無痛分娩の種類。無痛?和痛?硬膜外?

無痛?和痛?

医学的には、無痛分娩と和痛分娩の間には、明確な定義がありません。

一般的には、下記のように腰からカテーテルを入れて痛みを取る硬膜外麻酔を行う場合を無痛分娩。そして、その硬膜外カテーテルを使用する場合も含め、産まれる直前に会陰部に局所麻酔をしたり、マッサージや呼吸法などで痛みを和らげるものの総称を、和痛分娩と呼びます。和痛を謳った施設の場合、どのような方法なのか、自分の求めるものなのかは気にした方がよいかもしれません。

当院の場合、硬膜外カテーテルを入れた上で、痛みを「普通の生理痛以下」にする事を目標にしています。そのため、普通の生理痛くらいはあるので、人によって和痛と解釈する人もいると思います。

硬膜外麻酔

現在、日本で実施されている無痛分娩のほぼすべての病院が、この方法をベースにしています。
脳から直接つながった神経は頭からお尻まで長く存在し、色々な膜や組織、背骨に囲まれて大切に守られています。その一つの硬い膜を「硬膜」といい、そのすぐ「外側」に薬を入れていく操作を「硬膜外麻酔」と言います。その空間にカテーテルという細長いチューブを植え込み、痛みに合わせて薬を入れていきます。

硬膜外麻酔について、3Dで説明している動画がありました。参考にして頂ければと思います。アメリカで作られた動画を日本語に自動翻訳しているため、日本語が少し変ですが、参考にするには十分だと思います。

さらに、実際に硬膜外麻酔を行っている動画を見ながら説明したいと思います。

0:20 皮膚全体を消毒していきます。皮膚には常在菌がたくさんいるので、体内に侵入しないように消毒していきます。
0:30 滅菌消毒された、菌がまったく付いていない布で囲みます。これはこれからの作業をしやすくするためです。
0:45 背骨を触り、骨と骨の間を見極め、どこに針を進めていくか決めています。
1:00 キシロカインという局所麻酔を打ちます。歯医者さんで使用する、一瞬で痛みをとる薬です。 当院ではさらに細い針を使用します。
1:30 太めの針(外筒)を、骨と骨の間に挿入していきます。
1:40 上で説明した「硬膜外」という場所まで、慎重に太めの針(外筒)を進めていきます。
2:00 持続的に薬を入れるためのカテーテルを入れていきます。細くて曲がっても折れず、引っ張っても切れない丈夫な素材でできています。
2:30  カテーテルはそのままにし、太目の針(外筒)だけ抜きます。
3:00 片方にコネクタを取り付けます。これでこのコネクタから薬を入れると、体内の硬膜外に薬を入れる事ができます。
3:10 コネクタを通して、硬膜外へ薬を入れています。
3:20 抜けたらやり直しなので、テープでしっかり固定していきます。

本番は、このように座った状態で行いますので、背中で何が行われているかわからないと思います。一度、上の動画に目を通しておくと、少しは安心できるかと思います 。

施設によっては、横に寝た状態で行う施設もあります。どちらも特に違いはありません。

脊髄くも膜下麻酔

上記の硬膜のさらに内側に、くも膜下腔という、空間があります。その空間に神経がプカプカ浮いている状態なのですが、そこに直接薬を入れるやり方です。もし帝王切開のご経験がある方がいれば、この方法で麻酔をしたはずです。神経にかなり近いところに薬を入れるので、数十秒で効果が現れます。
 
 無痛分娩においては、この方法を単独で行うというより、①の硬膜外麻酔と併用して行われます。その場合、お互いの名前を合体して、脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA)と言われています。①と②の二つの方法を両方行ったというだけです。

脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔

脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA)の利点は、②の脊髄くも膜下を行う事で数十秒で痛みが取れる事と、①の硬膜外麻酔を使用する事で持続的に痛みを取ることができる事です。
なぜ併用するかというと、お互いの欠点を補っているからです。

①の硬膜外麻酔は効き始めるまでに10分程度時間がかかります。その代わり持続的にずっと薬を入れる事が可能です。
②の脊髄くも膜下麻酔は、効果が出るまで数十秒ですが、1時間程度で効果が無くなり、また痛み出します。

お産は10時間以上かかりますので、それらを併用して行う事で痛みをコントロールしていきます。

当院の場合、そもそもまだ痛みが出てくる前から薬剤投与を始めるため、硬膜外麻酔のみで対応しています。

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